耳に流れるロックを連れて、似合わないスカートの裾をばさばさやりながら歩く。
好きだった小説の主人公を真似てみる。
口ずさむ歌は自分のために書かれたんじゃないかって勘違いしそうなほどやさしくて、けれどそんなことは決してなくて。
私は何にも繋がらず、生み出しもしない。
世界や社会とやらが、私を拒絶したのではない。
そして私がそれらを遠ざけたわけでもない。平行線だ。
暑かった日差しはとっくに傾いて、並んで笑い合う学生たちの自転車の車輪はひどくゆっくりした速度で回っている。
何にも望んじゃいない。
ただひとつの私を生きたいだけなのに。
それだけなんだよ。他にはいらないよ。
音楽が途切れる。
充電し忘れた。