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覚悟はしていたけれど 予想はしていたけれど それでも こんなときだけ予感が当たるなんて 神様、これって不公平じゃないですか 「悪いな、14日は出張が入った」 「やっぱり・・・」 オフィスから歩いて10分、あたしは最高においしいコーヒーを出してくれるお洒落なオープンカフェの一席に座っていた。 もちろん一人ではない。 目の前には信じられないほど整った容姿の男性が、どこか不満を湛えた表情で愛飲の煙草をくゆらせ座っている。 その髪は金。 その瞳は紫暗。 彼の名は――三蔵。 「出張、か・・・」 教育の行き届いたウェイターが先程持ってきてくれたコーヒーを無意味にスプーンでかき混ぜてみる。自然下がる視線に、冷静な低い声がかかる。 「始発の飛行機で出る。その日じゅうに帰ってこれるかも怪しいところだ」 「もっと暇な人間がいるんじゃない? 何も三蔵が行かなくても」 会社で指折りの有能マネージメントアドバイザが動く必要はあるのだろうか。 「今回の仕事は会社にとって重要だ。役にたたん奴に行かせるワケにはいかねぇんだよ」 「ちぇー……」 不満を隠すなんて器用な芸当が一切出来ないあたしを見遣り、三蔵が小さく溜息をつく。 「そこらの中坊じゃあるまいし、バレンタインがどうの言うんじゃねェぞ」 「・・・わかってるくせに」 そう その日が世間で騒がれるバレンタインだとか、そんなことはどうだっていい お菓子についたおまけのおもちゃ並みの価値も、あたしにはない 2月14日 その日は あたしの誕生日 昨年の春、今の会社に入社した時からあたしたちは付き合い始めた。(諸々の詳細はあまり思い出したくない) だからあたしの誕生日がくるのは、今回がはじめてなのだ。 三蔵の誕生日は11月に友人を呼び集め、三蔵に嫌がられながらも盛大に祝ったのだ。 だから自分の誕生日がどんな日になるのか、ずっと楽しみにしていたのに。 「だから16日に有給取ったっつってんだろ、話くらい聞いてろ彰」 「それはすごく嬉しいよっ嬉しいけどっ………でも」 更に子どもっぽい不服を全身で現すあたしに、三蔵は煙草を消して立ち上がった。 「そろそろ時間だ――戻るぞ」 「あ・・・うん」 三蔵の手からコートを受け取りながら、あたしは生返事をした。 あたしがコートを着るのに手間取っている間に、三蔵はすでに支払いを終えてカフェから出ていた。 いつもなら待っていてくれるのに。 わかっている。 三蔵が不機嫌なのは、あたしのせいだ。 事情が事情だと、飲み込んで仕方ないと笑えば済むことだ 16日に祝おうねと喜べばいいことだ ――でも でもね、三蔵 どうしてあなたはそんなに 冷静でいられるの? 別になにをしてほしいわけではない 何かが欲しいわけではない ただ単純に 三蔵に会えないことが 堪えた 日にちが経つのは早いもので、気がつけば13日。 三蔵とカフェで話をして別れてたのが一週間前。 あれからお互い忙しく、働く部署も違うので会うことも儘ならず、電話も何もできないまま時間だけが過ぎていった。 今日、三蔵は会社に来なかった。 明日からの出張の準備等で、いろいろ飛び回っているらしい。営業という仕事柄、毎日笑顔だけは絶やさないあたしだけど、三蔵に会えない、ただそれだけで酷くへこんでいた。 精神的ダメージだけが加算されていく。 「っはぁ~・・・」 「おっ、似合わないため息なんかついて。何かあったか若人」 今月の新しい顧客データの書類をパソコンに打ち込む事務作業をしていて、しかし上役が仕事場にいないのをいいことに全部投げ出してデスクに突っ伏したあたしに軽く声をかけてきたのは、総務部長の朱泱だ。 いつも何かと声をかけてきてくれて、なかなか頼りになるおじさん…もといおにーさんだ。 「何でもないですよ……放って置いてクダサイ」 「ははっ そんだけ落ち込んで体中にカビ生やして何が”何でもない”だ。お前本当に腹芸の出来ん奴だな、貴見」 伏した顔を上げて、目だけで朱泱の姿を捉える。 高いブランド物のスーツを絶妙に着崩し(しかも似合ってる)、デスクに軽く腰掛けて長い足を組み笑顔を浮かべた姿は、デスクワークに倦んだ目にはひどく蠱惑的だった。 ……おっと。いかんいかん。 「まあ、単細胞のお前が悩むことっつったら一つしかないな――三蔵のこと、だろ?」 三蔵、という単語に、あたしはびく、と体を震わせた。 意識しない、無意識の反応だった。 「あーあーあー、本っ当にお前って単純」 「っ……う~……」 からからと笑う朱泱に、返す言葉はあたしにはなかった。 三蔵とあたしのことを知るのも、この会社では朱泱くらいなものだった。 だから相談もできるのだけれど、それよりもそのことをネタにからかわれる方が俄然多かった。何せ、朱泱は三蔵を昔から知っているから。 「すると何か?明日は貴見の誕生日なのに三蔵は出張で会えない、と。それで落ち込んでんのか」 「晴眼ですか……」 「貴見見てりゃ誰だって分かるだろ」 「朱泱なんてきらい」 「オレは貴見好きだぜ」 「…………」 「おい何か言えって」 「…………”何か”」 「……だめだコイツ」 結局、ウダウダとデスクと仲良しこよししていたあたしが会社を出る頃には日付が変わろうとしていた。 駅まで送るぞとの朱泱の申し出を、あたしは素直に受けることにした。 社の外はコートの前をしっかり合わせてもまだ肩を竦ませるほど空気が冷たい。 「――にしてもバレンタインが誕生日とはね」 「誕生日ケーキはいっつもチョコレートケーキなの。ひどいときには本当にチョコだけとか」 友人からは『事のついで』と称したカップケーキやらトリュフやらの手作りのお菓子をたくさんプレゼントとしてもらったものだ。 甘いものがとにかく好きなのは、誕生日のせいだと言い切っても過言ではないかもしれない。 「そりゃちょっとした災難だな」 「ん~…そうでもないよ」 一月の終わり頃から、街には『2.14』の文字が溢れる。 まるで自分の誕生日を街中に祝ってもらっているような気がして、実際はそれほど悪いものでもないのだ。 そこであたしの思考はストップした。 どれだけたくさんの人に祝ってもらっても どれだけたくさんのプレゼントをもらっても 本当に傍にいてほしい人は いない ――三蔵が いてほしい 唐突に立ちすくんだあたしに朱泱が何か言いかけて―― 「――おい、貴見」 「……ん、何?」 見上げた朱泱は――笑っていた。 「どデカイプレゼントが来てんぜ」 目を上げた道路の向こう側。 点滅信号に変わった横断歩道の横に佇んだ人影。 すらりとした体躯 見慣れた黒のロングコート 所構わず吸いっぱなしの煙草 そして そして 闇夜でも見紛うことのない 金髪 「!!……っ……!」 手にした鞄を放り出し ごゆっくり、と手を振って歩み去った朱泱に目もくれず あたしは真っ直ぐ いちばん会いたかった人の下に走った 「っ三蔵!!」 勢い良く飛びついたあたしを、三蔵はしっかりと受け止めて――強く抱きしめてくれた 馴染んだ煙草の香り 強い腕の力 あたたかな 体温 そのすべてが嬉しくて 涙があふれた 「三蔵……さんぞぉ…」 「……アホ面さらしてんじゃねぇよ」 名前を呼ぶと、抱きしめられる力が強くなる 体に直に響く三蔵の心地よい低い声に、あたしはまた涙を流した 涙が流れるたびに心の隙間が埋まっていくような気がして、あたしは流れる涙を拭うこともせずに、三蔵の胸にすがった 「彰」 「は……はい…」 ようやく涙が収まった頃、三蔵があたしの顔を見ずに言った。 「俺はお前の泣き顔見るためにこのクソ寒い中ここに来たんじゃねぇ」 「さん、ぞ――」 紫暗の瞳があたしの瞳を射抜いた 「笑えよ――誕生日だろうが」 今 時計の針は昨日を越え 今日を指した 2月14日 あたしが この世に生を享けた日 「うん……あたしの、誕生日、だ」 三蔵の目を見て笑おうとして あたしの目からまた新たな涙がこぼれた 「……オイ」 「だ、だってっ……」 ああだめだ 嬉しすぎて――笑うことさえできないくらい 嬉しくて そんなあたしの様子を見て、三蔵は一つ息をつく 「普段から馬鹿だとは思っていたが……ここまで馬鹿だと救いようがないな」 「え、えへへ……」 三蔵を見上げると、そっと長い指で涙を拭ってくれた その指の冷たさに、どのくらいここであたしを待っていてくれたのかが伝わってくるようだった 頬に触れる三蔵の手に手を合わせ、あたしはこれ以上ないほどの笑顔を浮かべた 「三蔵――ありがとう」 しかし三蔵はどこか不満そうにあたしの髪を弄んだ。 「……三蔵?」 「もう少し気の利いたことを言えねェのか」 三蔵の言わんとしているところを理解して、あたしは笑みを深くした。 「だって、あたしが三蔵のこと好きなのはずぅっと前からじゃない」 髪を弄ぶ三蔵の手が止まった。 「こんな素敵なことしてくれるから好きなんじゃなくて――あたしは三蔵の全部が好きなの」 普段の冷たいくらいのそっけなさも 言葉の足りなさも 時折みせるやさしさも 苛烈なまでの厳しさも 横柄な態度も ――遠い目をする孤独も あなたを彩るそのすべてを あいしています 「だから……今三蔵に伝えたい気持ちは、”ありがとう”なの」 間近に見上げる美しい紫暗の瞳は、今、あたしだけを見ている 「会いにきてくれて――ありがとう」 どちらからともなく、お互いの唇を求め重なる はじめは軽く、深くなっていく口付けに、もう言葉はいらない ねえ 三蔵 この気持ちは どうやってあなたに見せたらいいのかしら―― ありがとうの中に すべてを込めて Thank you, My Sweety -END- 10年前に書いた原稿ほぼそのまま掲載 我ながら砂吐き激甘かつ中途半端。そして三蔵様がニセモノすぎる^^
by noichigokoro
| 2012-02-13 21:57
| SS
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