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-*- 「そんなことを言い出すのは何処の独逸人だっ!」 「此処の日本人ですよ」 顔に笑顔を貼り付けたまま、男は目眩を覚えた。 下らない冗談も大概拙いが、それに真面目に返すとは言語道断だった――いや。 そもそも彼にまともに言葉が通じるとは、男は思えなくなっている。 と、件の探偵が男を見て一言。 「ところで君は誰だ?」 冗談抜きで頭が痛くなってきた。 先ほど小一時間かけて説明をしたというのに、全く無意味だったようだ。 ――藁にも縋る思いで此処まで来たというのに このままでは 精神が粉々になってし―― 「この人は妹御を探して欲しいと君に言ったんだよ」 今時珍しい、着物を着た男が静かに口を開いた。 辛うじて、男は自分を保った。 隣に坐ったやけに機嫌の悪そうな男は、先程から殆ど口を開いていない。 しかし、その癖かなりの存在感がある。 「ナンだ。そんなことか」 探偵の言葉に、男は叫んだ。 「そんなこととはどういうことですか!私共は、もう一週間も前から蒼(あおい)のことを探しているのですよ!」 連日の疲労も手伝って、男は言葉を荒げる。 「先日、漸く腕の良い探偵がいると人づてに聞いて、こうしてここまで来たのは妹の居場所を見つけ出してほしかったからで、下らない冗談を聞きに来たわけではないのです!」 、、、、、、 「その赤とかいう肩くらいのおかっぱ髪をした女の子は、男と一緒だな」 「は?」 探偵の突然且つ唐突な発言内容に、男は全く対処できなかった。 「その男の実家に行こうと思ったのかな。うん、そうだろう」 「ええっ!そ、それは本当ですか?」 「おかしな男だな。教えろと言ったのはあんたでしょう」 探偵はさも不思議そうに大きな瞳をさらに大きくさせる。 「い、いえ、信じるとか信じないの話ではなく、証拠は……?」 探偵は言葉を無視して立ち上がり、首を一つ回すと満足そうな声を上げた。 「僕の仕事は終わった!帰るぞ!」 「ち、ちょっと待って下さい」 、、、、、、 「妹の居場所は言ったぞ。後は其処に居る本馬鹿に聞きたまえ」 「榎木津さんっっっ!!!」 男の叫び虚しく、長身の探偵はあっという間に大股で座敷から退出してしまった。 後に残されたのは、空虚を掻くような格好をしたまま止まってしまった男と、相変わらず不機嫌な顔をした男であった。 「ど、どうすればよいのでしょうか……?」 「応えかねますね」 本を読むばかりで一向に男の方を見ない本屋の主は、益々不機嫌そうな声しか出さぬ。 「ですが、榎木津探偵はあなたに聞けと」 「あの男の逃げ口上ですよ、僕は全く関係ない」 「そ、そんな」 「取り敢えずあの男の言うとおりに探す、もしくは待ってみることですね。それで妹御が帰ってこられれば万事収まるのでしょう」 「それはそうですが……」 漸く男が此方を向いた。 向いてほしくなかった。 男は恐ろしく兇悪な顔をしていた。 「そうと決まったらお帰りを。僕も暇ではないんでね」 有無を言わさず、男は店から締め出された。 -**- 「へえ、そんなことがあったのかい」 あれから数日後の古書屋「京極堂」である。 今日はよれよれのシャツを着た、しがない小説家が主人の読書の邪魔をしに来ている。 「あれからこの人の機嫌の悪さと言ったら、酷いものでしたよ。何を聞いてもうんとも寸とも言わないんですから」 茶を持ってきた細君――千鶴子がころころと笑う。 千鶴子に礼を言って、猫背の男はぼそぼそと聞き辛い声で話す。 「はあ、でも京極堂の気分も分からないでもないなあ」 「君の同意なんか欲しくもないね」 一刀両断の元切り捨てられた小説家――関口は、それにもめげず減らず口を叩く。 「いや、ここは榎さんの友人にしか分からない苦労じゃないか。僕だって会う度振り回されているんだから」 本屋の主人――京極堂は、明らかに気分を害されたという顔をした。 いつも不機嫌そうな顔をしているから判り辛いが、これもまあ、長年の付き合いによる。 「一纏めにされてもな。榎木津は確かに僕の友人だが、関口君、君はただの知人だろう」 「毎回毎回、どうしてそうやって訂正するんだい」 関口の反論に、主人は気にした様子もない。 「そりゃ、間違った見方をされれば迷惑だからに決まっているじゃないか」 「僕が友人じゃいけないのかい」 「大いに困るね」 「それは……」 「わーはははは! 神のご登場だっ!」 関口の言葉は、高笑いによってかき消された。 「榎さん、近所迷惑だ」 「ふん、近所と呼べるほど人も居ないくせに」 盛大な音と共に座敷に上がりこんだ渦中の探偵――榎木津礼二郎は、言うが早いか早速座敷に寝転んだ。 「全く、依頼人とは何故にかくも馬鹿ばかり!つまらない、つまらないぞ京極!」 京極堂は探偵の意味不明な言葉を無視し、小説家の方へ視線を向けずに声をかけた。 「丁度いい。君の聞きたがってた事の顛末は、この"迷"探偵に聞くがいい」 「聞けるわけないだろう!」 突然、榎木津が顔を上げた。 「お?何だ、猿がいたのか」 「誰が猿ですか!」 「ほれみろ、そうやってキーキー叫んでいたらますます猿だな、関!」 「な、何しに来たんだい、榎さん」 「下僕の分際で神に物申すのか!」 そのまま、馬鹿馬鹿しい会話が数分続いた。 暫くして。 「眠いな。眠い時には寝るに限るのだ」 そう言うが早いか、榎木津はばたりと後ろに倒れた。 探偵はそれ以上何も言わなくなり動かなくなり、数秒後には寝息が届いてきた。 「……で、結局君は何しに此処へ来たんだい、関口君」 「え、えーっと……。何だったっけ」 ……こうして、本屋の日々は続く。 嗚呼 本屋はつらいよ。 基本設定 京極夏彦著「京極堂シリーズ」より拝借いたしました
by noichigokoro
| 2007-09-10 21:21
| SS
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