光あふれる室内には、先刻より尖った声が錯綜中。
「だからどうして分かってくれないの?」
「仕方ないじゃないか、これにしようって前から決めていたんだ」
大きな姿見の前を陣取って鏡をのぞきこむレイに、腕を組んで歩き回るアイリス。
毎度の光景である。当初ははらはらして成り行きを見守っていたが、今や恒例行事だ。
時が経つのを待つしかないのだ、部外者は。
「赤いタイがいいって言ってるだろう?」
「違うわ!今日の貴方にはピンクの方がより映えて素敵なのよ!」
出ました、アイリス両手を広げての猛アピール。
「・・・そうかな」
「そうですとも、私の貴方を見る目に間違いがあったことなんてなくてよダーリン」
「ありがとう、アイ。でも僕より今日の君がより輝いて見えるよ」
「嬉しいわ、レイ」
「ねーねー、今日のおでかけいつになるのー?」
黒目がちのうるうる目で、上目遣いのルーシィの頭をひと撫でしてため息をこぼす。
「私たちの存在を思い出してくれたらね」