高校3年生の現国のテストだった。
目を通した問題文があまりに衝撃的で、問題解くのも忘れて何度も何度も読み返した。
どんな問題が出されたかなんて全然記憶にないけど、問題として扱われた作品内容は、一字一句とまではいかないがほぼ完璧に記憶されていて、一体どなたが書かれたものなのか、原文を是非読みたい、もう一度読みたいと、その願いを一日たりとも忘れたことはなかった。
祖母が亡くなり、追うように祖父が亡くなった。
ねんごろな浄土真宗徒だった祖父母を少しでもなぐさめるようにと、家族が集まるごとに仏壇に手を合わせ、「仏説阿弥陀経」を幾度となく唱えている。
そうしてお経を唱えてなぞる度、私の頭はぐらありぐらりと揺れるのだ。
極楽は生者のものだ
生きている者の業だ
苦しいのも嬉しいのも哀しいのも喜ばしいこともすべて
命が尽きれば終わるんだ
しかし、それを赦さぬ人の欲望の淵を垣間見せる静かな短い話を
だから私は記憶から只の一度も拭い去ることが出来なかった