わざと遠い目的地をつくって、夜に自転車を疾走させるのが好きだ
小さいカバンとシャッフルだけを持って、ひいやりと気温が下がってゆく大気をきって走る
明るいコンビニ、照明の落とされた喫茶店、誰もいないコインランドリー
遅い夕食のおいしそうなにおい、入浴剤のふんわりした香り
同じ間取り、全く違うマンションの窓からもれる色
仕事から帰る人に、現場で現在只今仕事をしている人
運転の荒い人、丁寧に頭も下げてくれる人
道端の花についた水滴を吹き飛ばすようにして自転車の速度を上げる
帰る場所は自分にもあるのだと言い含ませるように 夜を駆ける