あたたかな日差しの中、クルーたちはそれぞれ思い思いの時間を過ごしている。
「なあルフィ」
「なんだ?」
まったりと甲板に寝そべって、談話をしている二人。
「どうしてルフィはいつも麦わら帽子かぶってるんだ?」
クルーの中では一番小さな、それでいて聡明な船医が好奇心たっぷりのくりっとした目で船長に尋ねる。
仰向けに寝そべって顔にくたびれた麦わら帽子をかぶせていた船長は、帽子を退けて、にいっと笑った。
「ししし。チョッパーとおんなじだ」
「俺と同じ?」
言われ、鮮やかな桜色の帽子に触れてみる。
大切な、思い出の帽子。
「おれが一番尊敬してる人から渡されたんだ」
「海賊か?」
「海賊だ」
「もらったのか?」
むくっと起き上がった船長は、笑った顔のままくるりくるりと帽子を回す。
「違う。この帽子は預かったんだ。いつか立派な海賊になって、返しにこいってな」
「ルフィの尊敬する人か……どんなすごい人なんだ?教えてくれよ!」
「おれが知ってるなかで、いちばんでっかい男だ」
そう言って
嬉しそうに 誇らしそうに
笑った。
「ウソップが言ってた、巨人よりもか!?」
いつか聞いた、天に届くほど大きい人間を思い浮かべる。
「ああ!おれはぜったいもっともっとでっかい男になるんだ」
「俺もいつか、もっとでっかくなれるかな」
「なれるさ」
ぽすん、と頭に被せられた麦わら帽子。
ふたつ帽子を被る格好になって、ルフィの顔は見えないけれど
きっといつものあの笑顔でいるんだろうと、チョッパーは思った。
「おーい野郎ども!昼メシの時間だぞ、早くこねぇとメシ抜きだ!」
「よっしゃー!メシだーっ!!」
チョッパー行くぞ! と真っ先に駆け出した船長の後姿を眺め、チョッパーは心のどこかに火が点いたような気がした。
――おれだって
「よーし、俺もいっぱい食ってルフィよりも大きくなるぞ!」
大切な帽子が飛ばされないようしっかりと押さえ、チョッパーもまたルフィを追って、駆け出した。