こうなることは以前からあった。
江國女史の作品で出会ったこの言葉ほど的確に表現する言葉を私は他に知らない。
何の前ぶれもなく、心が哀しい果物になってしまうのだ。
冷たい金属に触れるより早くすうっと気分が冷える
こわくてこわくて大声で叫んで暴れてわめき散らしたいのに胸に何かがつかえて声が出ない
そのかわりのようにこわばった顔から涙がぼろぼろこぼれて何ひとつ考えられなくなる
果汁を絞り出すように泣き続けて、
自分がどうして泣いているのかわからなくなる頃忘れたように涙が止まる
くしゃくしゃの、絞りカスみたいになった心だけを残して
木は私だ。
土は私だ。
枝は私だ。
実は私だ。
果物を育てているのは他でもない自分自身だということに、安堵と納得と
少しばかりの呵責を感じて
けれど何ひとつ対策を講じることができないでいる
時間が経てば、痛みを忘れるように意識に上らなくなるけれど
またふとした瞬間に心が哀しい果実になって、繰り返す。
誰のせいでも誰のためでも誰によってでもなく実る哀しい果実
握り潰すことも、打ち捨てることもできなくて
今日もまた、何かから逃げるように果汁を絞っている