いつも上から悠々と見下ろしてくる声を無視して、バランスの悪い椅子の上で目一杯顎を上げる
薄暗い書庫、目的の背表紙へ指先がかかるあと少しのところで
「危ないですよ」
さも紳士ぶって空を掻く手を取ると、あっという間に地面へ連れ戻された
「・・・余計な事を」
やさしくて無遠慮で、有無を言わさぬ手の持ち主を睨み付ける
子供のように膨らませた頬で、馬鹿にされぬように威厳を湛えた目で
「これ以上可愛いことを仰るのでしたら――」
瞬きの間に縮まる距離
何一つ変わらないと思われた表情
すっと細められた目の色が変わる
「――それなりの、対応を」
今度は私が見上げる番