「人間は弱いよなぁ……一人でいるのがこんなにもつらい」
「私がいるぞ」
「お前がいてもおもしろくもなんともない。俺が居てほしいっつったのはグレイシアのことだ!」
「ああ……わかっている」
「わかってねえ」
先月式を挙げたばかりの新婚の親友が、いかに結婚が素晴らしいのかと熱弁を振るい始める。式を挙げてから惚気はもう毎日のことで、すでに耳にタコだ。
「一人の女性に縛られることが、そんなに嬉しいか?」
「縛る縛られるって関係じゃねえ。これから共に歩んでいくんだ」
赤面するような台詞を真顔で言う辺り、こいつは相当彼女にヤラれているようだ。
「ま、おまえさんもいつかこれ以上はない、って女性に巡り合えるさ。俺が保証する」
「……私は一人でも平気だが」
「そうやって粋がってられるのも今のうちだぜ?お前が式を挙げるときに、今までどんだけ彼女を取られた男どもから恨みをかってるのか披露してやるから覚悟しとけ」
「はははは!望むところだ」
そうやって笑いあった奴は、もういない。
今なら分かる
一人でいるのが こんなにもつらいことが
人はこれほどに 弱いということが
いつかお前のように 笑って惚気を言える日がくるのだろうか?
応えてくれないか――ヒューズ
~了~
【Written by Mycontrol】
~蛇足~
ヒューズ中佐大好きです
彼の言葉はいつだってあたたかくて、思いやりと愛にあふれているのです
そんな彼を失うって、どれだけ辛くって哀しいことなのでしょうか