天井まで届きそうだ。
膨大な数のシリンダーは色とりどりの果実、花弁、樹片に満たされている。
ライトに照らされ、静かな影を白いタイルへ落とす様が目に美しい。
密封されているはずなのに、どれも芳しい香りを、決して隣接する香に混じることなく放つ不思議に私の五感は支配される。
否、触感だけは違った。
大きく節ばった乾いた手が、ずいぶんと小さい私の手を握っている。
しかしやさしい掌から体温は感じられない。
そうか、このきれいな場所には温度がないんだ。
それに気がつくが、見上げる先の笑顔が私を放さない。
鼻腔に届く、熟れた果実の匂いは腐臭に似ていた。